静岡県西部エリアを中心に、冠婚葬祭にまつわる様々なサービスを提供する「パルモグループ イズモ株式会社」。今回は新設された納棺部門を引っ張る納棺士、小原様に納棺士になったきっかけや、パルモグループ イズモ株式会社での働き方、これからの展望など様々なお話を伺いました。
早速ですが、小原様が納棺士に挑戦されることになったきっかけを教えていただけますか?
小原:叔父の葬儀の際にエンゼルケア(死後に行う処置、保清、メイクなど全て)をしている様子を見たのが最初のきっかけです。私は当時中学生だったのですが、それまではエンゼルケアのようなお仕事が存在することを知りませんでした。
人が亡くなる直前や、亡くなった後に提供されるサービスというものがあるんだ、という衝撃がとても強かったことを覚えています。
転職を考え始めた際にそのことを思い出し、色々な仕事を調べたうえで納棺士に挑戦しようと決めました。
それまでは調理師として働いていましたから、本当にゼロからのスタートでした。
もともとは全く別の業界でお仕事をされていたのですね。
このようなキャリアチェンジをされて納棺士になる方は珍しいのではないですか?
小原:いえ、意外にもほかの業種からキャリアチェンジされてくる方は多いですよ。美容師や介護職など、本当に様々な経験をされた方が納棺士になっています。
葬儀のお仕事は、頑張り次第で割と早く独り立ちすることができますから、前職で何をしていたかに関わらず挑戦しやすい、というのは大きな魅力の一つだと思います。
葬祭業界に挑戦したいけれど、どんな職種が自分に合っているのか分からないという方には、ぜひ納棺士も選択肢の一つに入れていただきたいです。
ありがとうございます。
キャリアチェンジを経て納棺士として働く中で、特に印象に残っていることや苦労したことを教えていただけますか。
小原:やはり小さなお子様や、赤ちゃんの納棺は強く印象に残っていることが多いですね。これまで15件ほどお子様の納棺に携わっていますが、そのうちの半数が生後1年未満で亡くなったお子様でした。
お子様の納棺式は、何度経験してもご家族の悲しみの雰囲気に圧倒されてしまいます。
だからこそ、ご家族の心のケア、いわゆるグリーフケアも大切にしなければなりません。それと同時に、ご納得いただける納棺をしなければと気が引き締まります。
ただ、どういった方の納棺式であっても、ご家族が憔悴されていることに変わりはありません。故人様が病気で極端に痩せてしまったりして、元気だったころとかけ離れたお姿になっていることもあります。そういった場合、故人様が亡くなったことはもちろんですが、生前お元気だったころと違い過ぎるお姿に悲しみを感じられることも多いです。
そこで、まずは出来る限り生前のお姿に近づけて差し上げることが、納棺士ができるグリーフケアの第一歩だと考えています。 また、その際はご遺族立ち合いの元で行いますから、様々な思い出話で盛り上がることもあります。そうしてお話を聞くということも、グリーフケアに繋がると感じています。
なるほど、グリーフケアにも様々な形があるということですね。
小原:そうですね。ただ、故人様との思い出があっても、たくさんお話をされるご遺族とそうではないご遺族がいらっしゃいます。
ですからどんな空気感かな?と観察をしながら、まずは私から会話のボールを投げてみます。そのボールが返ってきたらまた反応して…という風に、慎重に進めさせていただくことが多いですね。
その時には、お話を聞いてくれているな、とご遺族に感じていただける姿勢がとても大切だと思っています。
そうなのですね。そうした心理的なケアも含め、このお仕事のやりがいをどういったところに感じていますか?
小原:以前、私もこの仕事の一番のやりがいは何なのか?と先輩に聞いたことがあります。その先輩は「”ありがとう”って言ってもらえることだよ」と仰っていましたが、私は実際のやりがいについてはなかなか感じられないまま2年程が過ぎてしまいました。その間ずっとやりがいって何だろう?と思っていましたが、最近になってその先輩が言っていたことがようやく解るようになってきました。
ご遺族からありがとうと言っていただけることはもちろん、大切な方を亡くして悲しみが深い中でも笑顔になっていただけた時に、この仕事をやっていて良かったなと心から思えるようになりました。
この感覚は、言われただけではなかなか解らなくて、実際に体験してみて初めて感じられるものだと思います。
確かに葬儀のお仕事に携わる方は、ご遺族にそうした前向きな感情を抱いて頂けるように寄り添い接する過程にやりがいを感じられるとおっしゃる方もいますね。
小原:そうですね、そういったご遺族への接し方についても常に追求していくことができるお仕事ですし、やりがいにも直結すると思います。
ただ、最初のうちは施行することに精一杯になってしまって、それ以外のことにはなかなか気が回せません。
私の場合は2年やってようやく、納棺の施行をしながらその他にも気づかいができるようになり、そういった気づかいによって、お客様から”ありがとう”や”笑顔”といった反応を頂けることを知りました。
少し時間はかかりましたが、施行以外のことに目を向ける余裕ができたからこそ、感じられるようになったやりがいですね。
ありがとうございます。
小原:以前勤めていた会社では、私は納棺湯灌を担当していて、イズモ株式会社から納棺湯灌のお仕事をいただいているという関係でした。私が納棺士を目指していた当時、すでにイズモ株式会社で納棺湯灌の内製化の計画を推し進めている状況だったようです。
同じようなタイミングで、私が配属されていた事業所を閉鎖することが決まり、そこに所属するスタッフをイズモ株式会社に受け入れていただくという話が持ち上がりました。
前職は全国展開している企業だったので、閉鎖後は別事業所へ異動するという選択肢もあったのですが、基本的に地元採用をしていたため、異動のお願いをしても地元で生活を続けたいと考えるスタッフに退職されてしまう可能性がありました。
せっかく高い技術を持ったスタッフが働けなくなってしまうのは、とてももったいないことですよね。
そこで地元にある企業で、かつ今まで納棺湯灌の依頼を請け負ってきたイズモ株式会社で働けたらいいのではないか、という前職の意向と、内製化を進めたいイズモ株式会社の意向が一致したことから、納棺湯灌部門の立ち上げに携わらせていただくことになりました。
なるほど。次の時代に適応するために強くなっていくぞ、という貴社の目標と、受け入れ先を探していた会社さんとの意向が合致したということなのですね。
小原:はい。
実際に貴社に入社をされて以降、苦労された点などはありましたか?
小原:やはり突然この会社の社員になるわけですから、受け入れ態勢はどうなるのだろう?という不安がありました。ですが実際に入社してみると、仲間意識が強い方が多いことに驚かされました。
「同じ会社の仲間になったんだから、何でも言ってね」みたいに声をかけていただけたり、すごく距離が近くなったんです。
ですから、所属を超えてお互い様々な業務についてお願いがしやすくなって、良い関係でスタートができたなと感じています。 今は社内共有もありますし、朝礼時に情報を発信することも可能になりました。
これからもっと情報伝達がスムーズになって、意見交換も活発に出来たらいいなと思っています。
これから事業所を確立していく段階かと思いますが、今取り組まれていることはありますか?
小原:これから2023年の繁忙期までに、受け入れ可能な施行数を現在の倍にすることを目標としています。採用後、すぐに納棺士として活躍できるわけではありませんので、教育期間も含めて2023年4月までの間に、スタッフを増やそうと、このタイミングで積極的に求人活動を行っています。併せて、教育体制の強化に取り組んでいます。
また、教育体制だけでなく、スタッフそれぞれに「気づくこと」を大切にしてもらっています。
例えば事業所のデスク周りにゴミが落ちていたとします。
日頃から「まあいいや」と思って放置していると、お仕事中にも同じことをしてしまいます。
ですから、気づいたらその問題を解決するという癖をつけるようにしています。
そうすることで、納棺の技術だけではない、細やかなサービスの提供につながると考えているからです。
どんなお仕事でも、日頃の癖は出てしまいますから大切な心掛けですね。
では続いて、納棺士の1日の勤務の流れやスケジュール例を教えていただけますか。
小原:当部署の場合、出勤は9時、退勤が5時半になります。 1日に入る施行件数は、最大3件まで。それぞれ10時、12時半、3時からスタートする枠がありますので、その時間に沿って業務を進めます。
まず9時に出勤したら、最初に施行報告書を作成します。施行報告書はこれからどこに行くのか、何を準備するのかを記入して、それに沿って荷物を準備します。
その後、ご依頼をいただいた方のご自宅や、各イズモホールに移動して施行をします。
もし空き時間があれば、着せ替えの練習や、備品の補充、事務所の清掃などを行っています。
特に備品の補充と整理はとても大切にしています。化粧品がたくさん詰まったバッグを持っていくのですが、このバッグの中身を意外とご遺族がよくご覧になるんです。
とても珍しいですから、見てしまう気持ちはよく分かります。私も中に何が入っているのか気になります。
小原:そうですよね、私もきっとご遺族側だったらとても気になると思います。 だからこそ、ファンデーションで汚れていたり、メイク用の筆が汚いなどで、ご遺族に不快感を与えたり、不安に思われてしまわないように心掛けています。
それに、毎日手入れをして整頓を心がけておけば、いざ使用する際に足りないものがあったりして慌てることもありません。スムーズな施行をするためにとても大切なことだと思います。
それから、これは私個人の考えですが、ロゴマークやメイク道具の向きがきちんと揃っていないと、なんだか気持ち悪く感じてしまうんです。
ですから、化粧品や道具の向きを整えて、実際に納棺の施行をする際に気持ちよく対応できるようにしています。 口紅やチークなどの平たいパレット類は、使う順番に重ねているんですよ。
化粧については全くの素人ですが、整理整頓が行き届いていてとても使いやすそうです。
小原:当部署では基本的に所定労働時間を超える勤務がありません。
仮に時間外労働が発生した場合は、出退勤調整を行います。
例えば夜8時まで業務が伸びてしまった場合、次の日の就業を11時から開始するように変更したりします。夜に時間が伸びてしまった分、朝の出勤時間を遅くして体を休ませましょうと決まっています。
それから、シフトで決められた休日を削ることもありません。
そういった意味では、当社の葬祭ディレクターよりも労働時間が少ないのではないかと思います。
そうなんですね、そうした勤務時間を維持する秘訣や、気を付けていることはあるのでしょうか。
小原:前提として、あまり無理をしないということが大切ですが、時には無理をしないと受注ができなくなってしまいます。ですからシフトを作るとき、事前に依頼が多く入ることが予想できる日には、人員が厚くなるよう出勤できる人を増やしたりすることが多いです。
そのようにシフトの段階でまずは調整して、その後変動があればさらに調整をするという流れですね。
まずはシフトの段階で工夫をすることも大切なんですね。
葬儀業界で働くと、家庭との両立が難しいという話を聞くことがありますが、この点についてはいかがですか?
小原:私自身はあまり遅くまで勤務をすることがないため、それほど支障はありません。 ですが、以前から目標にしていたことがあります。
それは、結婚と妊娠、出産を経験してからも復帰しやすい部署にしたいということでした。納棺士には女性が多いですから。
技術があれば復帰しやすいのが納棺士という仕事です。ですから、仕事ができる時間だけパート勤務として働いてもらうということもできるんです。
納棺士としての技術は、お子さんが生まれたからといってすぐに失われてしまうようなものではないと思いますから、その技術があれば大丈夫という環境にしたいですね。
そうなれば、たくさんの荷物を運ぶのが大変だということであっても、もう一人のスタッフに荷物を運ぶことだけ手伝ってもらえれば、仕事ができるようになります。
また、先ほどお話した通り出退勤調整が導入されていることも強みです。
1ヶ月間で決まった時間勤務ができれば正社員として復帰できます。
ですから、例えばお子さんが熱を出して午前中しか働けなかった、という場合でも調整しながら働いていただくことも可能です。
素晴らしいですね。こうした制度が整っていると、気心の知れた仲間が戻ってきてくれるという心強さもありますね。
小原:そうなんです。
これから産休・育休を取得したい人にも嬉しい制度です。それに戻ってくる人も、通い慣れた職場や気心の知れた同僚がいるという安心感は強いと思いますね。
また、もともと葬祭ディレクターとして勤務していた方も、納棺事業所に移籍していただいて、決まった枠の時間だけ働くということも今後検討しています。
もちろん産休・育休から復帰した時に納棺事業所だけでなく、事務職等にジョブチェンジしていただくこともできます。
規模の大きな会社だからこそ、ライフステージの変化に合わせて様々なポジションで活躍ができるのは強みだと思います。
面白いですね。
例えば先に葬祭ディレクターとして勤務していて、のちに納棺士になれば、また違う視点を持った納棺士になれそうです。元々いるスタッフさんにとっても良い刺激になるかもしれませんね。
小原:絶対に強みになると思いますね、まさに当社の最大の強みだと思います。
ありがとうございます。
小原:納棺士というお仕事は、興味と意欲があれば誰でも挑戦できるお仕事だと思います。
所作や身だしなみなども大切にしていますから、男女問わず普段の生活にも役立てていくことができる、大人としての品格や、感性が磨かれるお仕事なんです。
先ほどおっしゃっていた「気づき」も大人としての品格や感性のひとつですよね。
小原:そうなんです。
気遣いができるかどうかというのは、言葉の端々から伝わると思います。
すごく注意していても、日頃の生活で適当にやっていることが出てしまうことも多いです。そういったところに気付けるかどうかはある種の才能かもしれません。
絶対にそういった人でなければ成功できないわけではありませんが、細かいことに気付ける人は納棺士というお仕事にとても向いていると思います。
身だしなみや所作ももちろんですが、お客様対応や納棺の技術も「気づき」を活かしていけると良いなと思います。
パルモグループ イズモ株式会社
葬祭部 納棺事業所所長:小原 こずえさん
調理師として勤務したのち、キャリアチェンジして納棺士に。
現在はパルモグループ イズモ株式会社葬祭部に新設された納棺事業所を取りまとめる。
葬祭部 納棺事業所所長:小原 こずえさん
調理師として勤務したのち、キャリアチェンジして納棺士に。
現在はパルモグループ イズモ株式会社葬祭部に新設された納棺事業所を取りまとめる。
納棺士になったきっかけと印象深いお仕事とは?小原様の場合
本日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、小原様が納棺士に挑戦されることになったきっかけを教えていただけますか?
小原:叔父の葬儀の際にエンゼルケア(死後に行う処置、保清、メイクなど全て)をしている様子を見たのが最初のきっかけです。私は当時中学生だったのですが、それまではエンゼルケアのようなお仕事が存在することを知りませんでした。
人が亡くなる直前や、亡くなった後に提供されるサービスというものがあるんだ、という衝撃がとても強かったことを覚えています。
転職を考え始めた際にそのことを思い出し、色々な仕事を調べたうえで納棺士に挑戦しようと決めました。
それまでは調理師として働いていましたから、本当にゼロからのスタートでした。
もともとは全く別の業界でお仕事をされていたのですね。
このようなキャリアチェンジをされて納棺士になる方は珍しいのではないですか?
小原:いえ、意外にもほかの業種からキャリアチェンジされてくる方は多いですよ。美容師や介護職など、本当に様々な経験をされた方が納棺士になっています。
葬儀のお仕事は、頑張り次第で割と早く独り立ちすることができますから、前職で何をしていたかに関わらず挑戦しやすい、というのは大きな魅力の一つだと思います。
葬祭業界に挑戦したいけれど、どんな職種が自分に合っているのか分からないという方には、ぜひ納棺士も選択肢の一つに入れていただきたいです。
ありがとうございます。
キャリアチェンジを経て納棺士として働く中で、特に印象に残っていることや苦労したことを教えていただけますか。
小原:やはり小さなお子様や、赤ちゃんの納棺は強く印象に残っていることが多いですね。これまで15件ほどお子様の納棺に携わっていますが、そのうちの半数が生後1年未満で亡くなったお子様でした。
お子様の納棺式は、何度経験してもご家族の悲しみの雰囲気に圧倒されてしまいます。
だからこそ、ご家族の心のケア、いわゆるグリーフケアも大切にしなければなりません。それと同時に、ご納得いただける納棺をしなければと気が引き締まります。
ただ、どういった方の納棺式であっても、ご家族が憔悴されていることに変わりはありません。故人様が病気で極端に痩せてしまったりして、元気だったころとかけ離れたお姿になっていることもあります。そういった場合、故人様が亡くなったことはもちろんですが、生前お元気だったころと違い過ぎるお姿に悲しみを感じられることも多いです。
そこで、まずは出来る限り生前のお姿に近づけて差し上げることが、納棺士ができるグリーフケアの第一歩だと考えています。 また、その際はご遺族立ち合いの元で行いますから、様々な思い出話で盛り上がることもあります。そうしてお話を聞くということも、グリーフケアに繋がると感じています。
なるほど、グリーフケアにも様々な形があるということですね。
小原:そうですね。ただ、故人様との思い出があっても、たくさんお話をされるご遺族とそうではないご遺族がいらっしゃいます。
ですからどんな空気感かな?と観察をしながら、まずは私から会話のボールを投げてみます。そのボールが返ってきたらまた反応して…という風に、慎重に進めさせていただくことが多いですね。
その時には、お話を聞いてくれているな、とご遺族に感じていただける姿勢がとても大切だと思っています。
そうなのですね。そうした心理的なケアも含め、このお仕事のやりがいをどういったところに感じていますか?
小原:以前、私もこの仕事の一番のやりがいは何なのか?と先輩に聞いたことがあります。その先輩は「”ありがとう”って言ってもらえることだよ」と仰っていましたが、私は実際のやりがいについてはなかなか感じられないまま2年程が過ぎてしまいました。その間ずっとやりがいって何だろう?と思っていましたが、最近になってその先輩が言っていたことがようやく解るようになってきました。
ご遺族からありがとうと言っていただけることはもちろん、大切な方を亡くして悲しみが深い中でも笑顔になっていただけた時に、この仕事をやっていて良かったなと心から思えるようになりました。
この感覚は、言われただけではなかなか解らなくて、実際に体験してみて初めて感じられるものだと思います。
確かに葬儀のお仕事に携わる方は、ご遺族にそうした前向きな感情を抱いて頂けるように寄り添い接する過程にやりがいを感じられるとおっしゃる方もいますね。
小原:そうですね、そういったご遺族への接し方についても常に追求していくことができるお仕事ですし、やりがいにも直結すると思います。
ただ、最初のうちは施行することに精一杯になってしまって、それ以外のことにはなかなか気が回せません。
私の場合は2年やってようやく、納棺の施行をしながらその他にも気づかいができるようになり、そういった気づかいによって、お客様から”ありがとう”や”笑顔”といった反応を頂けることを知りました。
少し時間はかかりましたが、施行以外のことに目を向ける余裕ができたからこそ、感じられるようになったやりがいですね。
ありがとうございます。
新しい環境でのスタート!部門立ち上げで働き方に変化はあった?
少しお話が変わりますが、今回は納棺部門の立ち上げに携わっておられますね。貴社で納棺湯灌部門を立ち上げるに至った経緯を改めて教えていただけますか?小原:以前勤めていた会社では、私は納棺湯灌を担当していて、イズモ株式会社から納棺湯灌のお仕事をいただいているという関係でした。私が納棺士を目指していた当時、すでにイズモ株式会社で納棺湯灌の内製化の計画を推し進めている状況だったようです。
同じようなタイミングで、私が配属されていた事業所を閉鎖することが決まり、そこに所属するスタッフをイズモ株式会社に受け入れていただくという話が持ち上がりました。
前職は全国展開している企業だったので、閉鎖後は別事業所へ異動するという選択肢もあったのですが、基本的に地元採用をしていたため、異動のお願いをしても地元で生活を続けたいと考えるスタッフに退職されてしまう可能性がありました。
せっかく高い技術を持ったスタッフが働けなくなってしまうのは、とてももったいないことですよね。
そこで地元にある企業で、かつ今まで納棺湯灌の依頼を請け負ってきたイズモ株式会社で働けたらいいのではないか、という前職の意向と、内製化を進めたいイズモ株式会社の意向が一致したことから、納棺湯灌部門の立ち上げに携わらせていただくことになりました。
なるほど。次の時代に適応するために強くなっていくぞ、という貴社の目標と、受け入れ先を探していた会社さんとの意向が合致したということなのですね。
小原:はい。
実際に貴社に入社をされて以降、苦労された点などはありましたか?
小原:やはり突然この会社の社員になるわけですから、受け入れ態勢はどうなるのだろう?という不安がありました。ですが実際に入社してみると、仲間意識が強い方が多いことに驚かされました。
「同じ会社の仲間になったんだから、何でも言ってね」みたいに声をかけていただけたり、すごく距離が近くなったんです。
ですから、所属を超えてお互い様々な業務についてお願いがしやすくなって、良い関係でスタートができたなと感じています。 今は社内共有もありますし、朝礼時に情報を発信することも可能になりました。
これからもっと情報伝達がスムーズになって、意見交換も活発に出来たらいいなと思っています。
これから事業所を確立していく段階かと思いますが、今取り組まれていることはありますか?
小原:これから2023年の繁忙期までに、受け入れ可能な施行数を現在の倍にすることを目標としています。採用後、すぐに納棺士として活躍できるわけではありませんので、教育期間も含めて2023年4月までの間に、スタッフを増やそうと、このタイミングで積極的に求人活動を行っています。併せて、教育体制の強化に取り組んでいます。
また、教育体制だけでなく、スタッフそれぞれに「気づくこと」を大切にしてもらっています。
例えば事業所のデスク周りにゴミが落ちていたとします。
日頃から「まあいいや」と思って放置していると、お仕事中にも同じことをしてしまいます。
ですから、気づいたらその問題を解決するという癖をつけるようにしています。
そうすることで、納棺の技術だけではない、細やかなサービスの提供につながると考えているからです。
どんなお仕事でも、日頃の癖は出てしまいますから大切な心掛けですね。
では続いて、納棺士の1日の勤務の流れやスケジュール例を教えていただけますか。
小原:当部署の場合、出勤は9時、退勤が5時半になります。 1日に入る施行件数は、最大3件まで。それぞれ10時、12時半、3時からスタートする枠がありますので、その時間に沿って業務を進めます。
まず9時に出勤したら、最初に施行報告書を作成します。施行報告書はこれからどこに行くのか、何を準備するのかを記入して、それに沿って荷物を準備します。
その後、ご依頼をいただいた方のご自宅や、各イズモホールに移動して施行をします。
小原様が使用されているバッグ。写真2枚目のように大きく開き、使い勝手がとても良さそうな印象。毎日使うとは思えないほど、隅々まで掃除が行き届いている。
1件の施行につき、準備時間を合わせて1時間半ほどで終わりますので、その後また事務所に戻ってくるというのを繰り返します。もし空き時間があれば、着せ替えの練習や、備品の補充、事務所の清掃などを行っています。
特に備品の補充と整理はとても大切にしています。化粧品がたくさん詰まったバッグを持っていくのですが、このバッグの中身を意外とご遺族がよくご覧になるんです。
とても珍しいですから、見てしまう気持ちはよく分かります。私も中に何が入っているのか気になります。
小原:そうですよね、私もきっとご遺族側だったらとても気になると思います。 だからこそ、ファンデーションで汚れていたり、メイク用の筆が汚いなどで、ご遺族に不快感を与えたり、不安に思われてしまわないように心掛けています。
それに、毎日手入れをして整頓を心がけておけば、いざ使用する際に足りないものがあったりして慌てることもありません。スムーズな施行をするためにとても大切なことだと思います。
それから、これは私個人の考えですが、ロゴマークやメイク道具の向きがきちんと揃っていないと、なんだか気持ち悪く感じてしまうんです。
ですから、化粧品や道具の向きを整えて、実際に納棺の施行をする際に気持ちよく対応できるようにしています。 口紅やチークなどの平たいパレット類は、使う順番に重ねているんですよ。
化粧については全くの素人ですが、整理整頓が行き届いていてとても使いやすそうです。
出退勤調整で残業なし。ライフステージの変化があっても働ける環境に!
納棺・湯灌のお仕事は、急に依頼が入って残業が発生することもあるかと思います。そういった時間外の勤務について、貴社ではどのように扱っていますか?小原:当部署では基本的に所定労働時間を超える勤務がありません。
仮に時間外労働が発生した場合は、出退勤調整を行います。
例えば夜8時まで業務が伸びてしまった場合、次の日の就業を11時から開始するように変更したりします。夜に時間が伸びてしまった分、朝の出勤時間を遅くして体を休ませましょうと決まっています。
それから、シフトで決められた休日を削ることもありません。
そういった意味では、当社の葬祭ディレクターよりも労働時間が少ないのではないかと思います。
そうなんですね、そうした勤務時間を維持する秘訣や、気を付けていることはあるのでしょうか。
小原:前提として、あまり無理をしないということが大切ですが、時には無理をしないと受注ができなくなってしまいます。ですからシフトを作るとき、事前に依頼が多く入ることが予想できる日には、人員が厚くなるよう出勤できる人を増やしたりすることが多いです。
そのようにシフトの段階でまずは調整して、その後変動があればさらに調整をするという流れですね。
まずはシフトの段階で工夫をすることも大切なんですね。
葬儀業界で働くと、家庭との両立が難しいという話を聞くことがありますが、この点についてはいかがですか?
小原:私自身はあまり遅くまで勤務をすることがないため、それほど支障はありません。 ですが、以前から目標にしていたことがあります。
それは、結婚と妊娠、出産を経験してからも復帰しやすい部署にしたいということでした。納棺士には女性が多いですから。
技術があれば復帰しやすいのが納棺士という仕事です。ですから、仕事ができる時間だけパート勤務として働いてもらうということもできるんです。
納棺士としての技術は、お子さんが生まれたからといってすぐに失われてしまうようなものではないと思いますから、その技術があれば大丈夫という環境にしたいですね。
そうなれば、たくさんの荷物を運ぶのが大変だということであっても、もう一人のスタッフに荷物を運ぶことだけ手伝ってもらえれば、仕事ができるようになります。
また、先ほどお話した通り出退勤調整が導入されていることも強みです。
1ヶ月間で決まった時間勤務ができれば正社員として復帰できます。
ですから、例えばお子さんが熱を出して午前中しか働けなかった、という場合でも調整しながら働いていただくことも可能です。
素晴らしいですね。こうした制度が整っていると、気心の知れた仲間が戻ってきてくれるという心強さもありますね。
小原:そうなんです。
これから産休・育休を取得したい人にも嬉しい制度です。それに戻ってくる人も、通い慣れた職場や気心の知れた同僚がいるという安心感は強いと思いますね。
また、もともと葬祭ディレクターとして勤務していた方も、納棺事業所に移籍していただいて、決まった枠の時間だけ働くということも今後検討しています。
もちろん産休・育休から復帰した時に納棺事業所だけでなく、事務職等にジョブチェンジしていただくこともできます。
規模の大きな会社だからこそ、ライフステージの変化に合わせて様々なポジションで活躍ができるのは強みだと思います。
面白いですね。
例えば先に葬祭ディレクターとして勤務していて、のちに納棺士になれば、また違う視点を持った納棺士になれそうです。元々いるスタッフさんにとっても良い刺激になるかもしれませんね。
小原:絶対に強みになると思いますね、まさに当社の最大の強みだと思います。
ありがとうございます。
細かいことに気づける人は納棺士向き?小原様が考える才能とは?
では今後納棺士に挑戦したい方、目指されたい方に一言頂けますか。小原:納棺士というお仕事は、興味と意欲があれば誰でも挑戦できるお仕事だと思います。
所作や身だしなみなども大切にしていますから、男女問わず普段の生活にも役立てていくことができる、大人としての品格や、感性が磨かれるお仕事なんです。
先ほどおっしゃっていた「気づき」も大人としての品格や感性のひとつですよね。
小原:そうなんです。
気遣いができるかどうかというのは、言葉の端々から伝わると思います。
すごく注意していても、日頃の生活で適当にやっていることが出てしまうことも多いです。そういったところに気付けるかどうかはある種の才能かもしれません。
絶対にそういった人でなければ成功できないわけではありませんが、細かいことに気付ける人は納棺士というお仕事にとても向いていると思います。
身だしなみや所作ももちろんですが、お客様対応や納棺の技術も「気づき」を活かしていけると良いなと思います。