株式会社まなか
代表取締役:宮嶋 良任さん
今回インタビューをさせていただいたのは、株式会社まなかの代表取締役 宮嶋様(右)と、葬祭事業部課長 岩本様(左)のお二人。
葬儀会社の中でも異色のサービスや商品を取り扱う株式会社まなか。
前編では同社が開発し提供する様々な商品やサービスについて、どういった経緯で誕生したのかを中心に伺います。
早速ですが、貴社では葬祭事業や墓石事業、仏壇事業から寺院コンサルティング事業まで様々な事業を展開されていますね。このように幅広く事業、サービスの提供を始めたきっかけを教えていただけますか。
社長:私がこの会社を始めた当時は、ちょうど「お葬式はいらない」というような本が出たり、お客様が「葬儀は必要ないんじゃないか」とおっしゃることが増えてきた時期でした。
業界としては逆風にさらされていたわけですが、それでも葬儀業界の人たちは変わることなく、当たり前のように同じサービスを提供していたように思います。
当時「どうして葬儀業界の人たちは、消費者の方を向いて、求められている商品やサービスについて探ろうとしないのだろう?」と、とても不思議に思っていました。
ですから、他がやらないのなら当社が現代のエンディング業界の中で、今の消費者が求めているであろう新しい商品を提供しよう!という考えに至ったのが最初のきっかけです。
そこから当社では「偲ぶことの真ん中と向き合う」という企業理念を掲げ、葬儀に関する様々なサービスをトータルで提供することを目指してきました。
お葬式、墓石、仏壇を自社で製作するビジネスモデルは革新的なものだと思います。
「葬儀は必要ない」と考えている人たちと向き合って、受け皿となるような商品やサービスを提供したいという想いは、事業を立ち上げた当時からずっと変わっていません。
なるほど。ホームページからも購入できる、斬新なお仏壇やお位牌もそういった想いから誕生したものなんですね。
というのも、人を想って手を合わせる時には特定の誰かに手を合わせますよね。その人のことを想うわけです。もしお位牌自体がその人だったらいつも会いに行きたくなるし、日常的に手を合わせたくなるんじゃないかな、と。これらの商品は、そんな考えから「その人を想える唯一無二のお位牌を作ろう」と取り組んだ結果に生まれました。
この商品は当社のショールームかオンラインショップでしか購入できません。ですからお客様に選んでいただいく時には「あ、これは私のお父さんっぽいな、お母さんにはこっちがいいかな」という風に選んでいただきたいですね。
そのように強い想いから購入してくだされば、もしかしたら手を合わせるといった行為を日常的に続けてくれるのではないかなと。すべての商品やサービスは、裏ではこんな風に考えて設計をしています。
そうだったんですね。では貴社の今の業界内でのポジショニングや商品・サービスも、ひとつの理念のもとに試行錯誤され結果なんですね。
社長:はい、最初は他社から商品を仕入れて販売したりもしていたんです。
ですが、これでは駄目だなと思うこともあり、更にオリジナリティのある商品を追い求めた結果、ここにたどり着きました。
こういった考え方が、今後業界のスタンダードになってくれたらいいなと思っていましたが、それがこのコロナ禍において叶ってきたのではないかと思っています。
どういうことでしょうか?
社長:はい、今回の新型コロナウィルスの流行に伴って国民全体がいったん立ち止まるタイミングになったと思うんです。そして、恐らくもう一度「祈る」という行為に対して、考えるきっかけになったのではないかなと思っています。
例えば屋内に大人数で集まることが難しくなったこともあってか、キャンプやバーベキューみたいに、自然と接する趣味が流行っていますよね。
ソロキャンプなども、コロナ禍前後から流行していますね。
社長:そうです。それに、お金の使い方や時間の過ごし方も変わったように感じます。
何故こうした傾向があるのかと考えてみたんですが、恐らく「自然の中で過ごすことで、心が豊かになる」ということに気が付き始めた人が多いんじゃないかと思うんです。
自然が豊かな空間にいることで、これまでのように生きていては得ることが難しかったものを得られる、という事に日本人が気づき始めていて、そのひとつが祈ることでもあるのではないかなと。
こうして、考え方や感じ方に変化があったおかげか、コロナ禍においても当社の理念や商品に共感してくださり、たくさんの方々が購入してくれています。
こだわって独自の製品を創り続けた結果が出ているんですね。
社長:やはり人が集まることができないので、葬儀の売り上げは減少してしまったのですが、他の事業の売り上げは順調に伸びています。
とはいえ、この状況は狙ってできたものではなく、走り続けていたらいつの間にかここにいたという感覚ですね。
もうひとつ、この理念と同じように大切にしているのが、社員が作ってくれた「思う人の傍に」というビジョンです。
葬祭業界は、どういった商品・サービスを提供する会社であっても、販売した後にお客様を追い続けることがなかなか難しいなと思っていました。 以前、社員とそのことについて話をしたら、売った後にどうなったのか分からないのは嫌だという意見がとても多かったんです。
せっかくお客様のことを考えて製作した商品を販売して届けたのだから、その後も支えられたら理想的じゃないですか。二人三脚とまではいかないと思いますが、ちょっとした時に「まなかが傍にいるな」と思って頂けるようになりたい、という想いからこのビジョンは作られました。
ですから、これはビジョンというよりも目指すべきゴールなのかもしれません。
このようなビジョンを大切にすることは、社員のやりがいにもなるんじゃないかと思っていますし、実現するためにはどうすればいいのかを社員全員で考えています。
手際よく仕事をすることも大切かもしれませんが、とにかくひとつのことを深く考えて、コロナ禍においても真摯にお客様に向き合える社員や会社であれたらいいなと思っています。
先ほどコロナ禍で日本人の考え方や感じ方に変化があった、というお話がありましたが、コロナ禍の前後でお客様の層や商品の売れ方や変化はありましたか?
社長:お客様の層に変化は感じないですね。もともと以前から、当社の理念に共感をしてくれたうえで購入していただく方が多かったからだと思います。
ところがコロナ禍で理念に共感してくれる方が増えたのか、お客様の数は増えました。
予約制のショールームにご用意しているお仏壇やお位牌は、ご来店いただく方の8割ものお客様がその日に購入されます。
亡くなった方への想いが強い方や、デザイン性の良さに惹かれていらっしゃる方が比較的多い印象ですが、共通して当社の商品が欲しい、他では売っていないものだから買いに来た、というように目的が明確なお客様が多いからだと思います。
その次に共感を得て購入していただくことが多いのはお墓ですが、こちらに関しては商品だけを見て買いに来てくださるわけではないので、お仏壇などとは少し異なります。
というのも、お墓を買う時に重視するポイントがいくつも存在するからです。
例えば「自宅から30分以内で行ける距離で、予算はこれくらいで、こんな風なところがいいな」と考えてから探し始めたとします。そうして「あ、たまたまここにお墓があった!」と、まなかのお墓を発見していただくことが多いわけです。
当社ではそうした流れを変えたいと考えています。
お位牌やお仏壇と同じように「まなかのお墓が欲しい」という考えが先に来てくれるようにしたいなと。
そのために、またお参りに行きたくなるような仕掛けを、建築家の方と相談をしてたくさん作っています。
自分のお墓なんだと思える個別性や、聖域性を感じるランドスケープを見て、そして説明を聞いていただくうちに、だんだんと惹かれてきたというお客様も少しずつ増えてきています。
確かにお墓を購入する時、アクセスの良さなどが優先されるというのは分かります。
このような取り組みが、結果的に貴社のお墓の購入やお客様の満足感に繋がっていくとお考えなんですね。
社長:そうですね、そもそもお墓というのはその人が眠りたい場所であるということが重要だと思っています。
「ここなら自分が眠るのに良さそうだな」「ここだったらお父さんやお母さんに眠ってもらいたいな」という感覚がお墓選びにおいては重要ですから、施設そのものにそう感じていただけるように作ることを大切にしています。
また、そのお墓がどういった意図で開発された商品なのかを、当社の社員がしっかりと説明をさせていただき、ご理解いただいたうえで購入していただくよう心がけています。
その結果、購入した後に何が起こるかというと、新しいコミュニティへと繋がっていくと考えているんです。
葬儀会社の中でも異色のサービスや商品を取り扱う株式会社まなか。
前編では同社が開発し提供する様々な商品やサービスについて、どういった経緯で誕生したのかを中心に伺います。
株式会社まなか
代表取締役:宮嶋 良任さん
2008年に代表取締役社長に就任。
以来独自商品を多数開発し、成長を続ける会社の要。
代表取締役:宮嶋 良任さん
2008年に代表取締役社長に就任。
以来独自商品を多数開発し、成長を続ける会社の要。
株式会社まなか
岩本 健太さん
2016年に株式会社まなかに葬祭ディレクターとして入社し、現在は採用活動も担当している。
岩本 健太さん
2016年に株式会社まなかに葬祭ディレクターとして入社し、現在は採用活動も担当している。
「葬儀は必要ない」と考えている人たちの受け皿を目指し、偲ぶことの真ん中と向き合う。
今日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、貴社では葬祭事業や墓石事業、仏壇事業から寺院コンサルティング事業まで様々な事業を展開されていますね。このように幅広く事業、サービスの提供を始めたきっかけを教えていただけますか。
社長:私がこの会社を始めた当時は、ちょうど「お葬式はいらない」というような本が出たり、お客様が「葬儀は必要ないんじゃないか」とおっしゃることが増えてきた時期でした。
業界としては逆風にさらされていたわけですが、それでも葬儀業界の人たちは変わることなく、当たり前のように同じサービスを提供していたように思います。
当時「どうして葬儀業界の人たちは、消費者の方を向いて、求められている商品やサービスについて探ろうとしないのだろう?」と、とても不思議に思っていました。
ですから、他がやらないのなら当社が現代のエンディング業界の中で、今の消費者が求めているであろう新しい商品を提供しよう!という考えに至ったのが最初のきっかけです。
そこから当社では「偲ぶことの真ん中と向き合う」という企業理念を掲げ、葬儀に関する様々なサービスをトータルで提供することを目指してきました。
お葬式、墓石、仏壇を自社で製作するビジネスモデルは革新的なものだと思います。
「葬儀は必要ない」と考えている人たちと向き合って、受け皿となるような商品やサービスを提供したいという想いは、事業を立ち上げた当時からずっと変わっていません。
なるほど。ホームページからも購入できる、斬新なお仏壇やお位牌もそういった想いから誕生したものなんですね。
株式会社まなかで購入できる「お位牌」たち。木製、ガラス製、天然石製など、いずれも非常にユニークなデザイン。こうした商品とコンセプトに強く共感を覚え、ショールームへ足を運ぶお客様も多い。
社長:そうです。
何故こんな変わった商品を作っているのかという話なんですが、実はもともとお仏壇メーカーといいますか、お位牌メーカーになりたいなと考えていたんです。というのも、人を想って手を合わせる時には特定の誰かに手を合わせますよね。その人のことを想うわけです。もしお位牌自体がその人だったらいつも会いに行きたくなるし、日常的に手を合わせたくなるんじゃないかな、と。これらの商品は、そんな考えから「その人を想える唯一無二のお位牌を作ろう」と取り組んだ結果に生まれました。
この商品は当社のショールームかオンラインショップでしか購入できません。ですからお客様に選んでいただいく時には「あ、これは私のお父さんっぽいな、お母さんにはこっちがいいかな」という風に選んでいただきたいですね。
そのように強い想いから購入してくだされば、もしかしたら手を合わせるといった行為を日常的に続けてくれるのではないかなと。すべての商品やサービスは、裏ではこんな風に考えて設計をしています。
そうだったんですね。では貴社の今の業界内でのポジショニングや商品・サービスも、ひとつの理念のもとに試行錯誤され結果なんですね。
社長:はい、最初は他社から商品を仕入れて販売したりもしていたんです。
ですが、これでは駄目だなと思うこともあり、更にオリジナリティのある商品を追い求めた結果、ここにたどり着きました。
こういった考え方が、今後業界のスタンダードになってくれたらいいなと思っていましたが、それがこのコロナ禍において叶ってきたのではないかと思っています。
どういうことでしょうか?
社長:はい、今回の新型コロナウィルスの流行に伴って国民全体がいったん立ち止まるタイミングになったと思うんです。そして、恐らくもう一度「祈る」という行為に対して、考えるきっかけになったのではないかなと思っています。
例えば屋内に大人数で集まることが難しくなったこともあってか、キャンプやバーベキューみたいに、自然と接する趣味が流行っていますよね。
ソロキャンプなども、コロナ禍前後から流行していますね。
社長:そうです。それに、お金の使い方や時間の過ごし方も変わったように感じます。
何故こうした傾向があるのかと考えてみたんですが、恐らく「自然の中で過ごすことで、心が豊かになる」ということに気が付き始めた人が多いんじゃないかと思うんです。
自然が豊かな空間にいることで、これまでのように生きていては得ることが難しかったものを得られる、という事に日本人が気づき始めていて、そのひとつが祈ることでもあるのではないかなと。
こうして、考え方や感じ方に変化があったおかげか、コロナ禍においても当社の理念や商品に共感してくださり、たくさんの方々が購入してくれています。
こだわって独自の製品を創り続けた結果が出ているんですね。
社長:やはり人が集まることができないので、葬儀の売り上げは減少してしまったのですが、他の事業の売り上げは順調に伸びています。
とはいえ、この状況は狙ってできたものではなく、走り続けていたらいつの間にかここにいたという感覚ですね。
想う人の傍にいたいから、作ったものを届けて、継続して支える。
シンプルで生活の中に馴染むまなかのお仏壇とお位牌。故人の思い出の品とともに飾ることもできる。
社長:これまでやってきた中で、一番大切にしていたのが「偲ぶことの真ん中と向き合う」という理念です。この理念の前では社長も社員も立場関係なく平等、という考え方は社内にはしっかりと浸透しているのではないかなと思います。もうひとつ、この理念と同じように大切にしているのが、社員が作ってくれた「思う人の傍に」というビジョンです。
葬祭業界は、どういった商品・サービスを提供する会社であっても、販売した後にお客様を追い続けることがなかなか難しいなと思っていました。 以前、社員とそのことについて話をしたら、売った後にどうなったのか分からないのは嫌だという意見がとても多かったんです。
せっかくお客様のことを考えて製作した商品を販売して届けたのだから、その後も支えられたら理想的じゃないですか。二人三脚とまではいかないと思いますが、ちょっとした時に「まなかが傍にいるな」と思って頂けるようになりたい、という想いからこのビジョンは作られました。
ですから、これはビジョンというよりも目指すべきゴールなのかもしれません。
このようなビジョンを大切にすることは、社員のやりがいにもなるんじゃないかと思っていますし、実現するためにはどうすればいいのかを社員全員で考えています。
手際よく仕事をすることも大切かもしれませんが、とにかくひとつのことを深く考えて、コロナ禍においても真摯にお客様に向き合える社員や会社であれたらいいなと思っています。
仏壇も墓石もお葬式も、まなかを求めるお客様を作りたい。
こちらはインタビュアーが最も心惹かれた「澄壇(すみだん)」と命名されたガラス製のお仏壇。このほかにも株式会社まなかではユニークなお仏壇が多数販売されていて、お位牌やおりん、写真立てなどとの組み合わせも楽しめる。より故人様らしさや家族らしさを追求できるのも、まなか製品の大きな魅力。
ありがとうございます。先ほどコロナ禍で日本人の考え方や感じ方に変化があった、というお話がありましたが、コロナ禍の前後でお客様の層や商品の売れ方や変化はありましたか?
社長:お客様の層に変化は感じないですね。もともと以前から、当社の理念に共感をしてくれたうえで購入していただく方が多かったからだと思います。
ところがコロナ禍で理念に共感してくれる方が増えたのか、お客様の数は増えました。
予約制のショールームにご用意しているお仏壇やお位牌は、ご来店いただく方の8割ものお客様がその日に購入されます。
亡くなった方への想いが強い方や、デザイン性の良さに惹かれていらっしゃる方が比較的多い印象ですが、共通して当社の商品が欲しい、他では売っていないものだから買いに来た、というように目的が明確なお客様が多いからだと思います。
その次に共感を得て購入していただくことが多いのはお墓ですが、こちらに関しては商品だけを見て買いに来てくださるわけではないので、お仏壇などとは少し異なります。
というのも、お墓を買う時に重視するポイントがいくつも存在するからです。
例えば「自宅から30分以内で行ける距離で、予算はこれくらいで、こんな風なところがいいな」と考えてから探し始めたとします。そうして「あ、たまたまここにお墓があった!」と、まなかのお墓を発見していただくことが多いわけです。
当社ではそうした流れを変えたいと考えています。
お位牌やお仏壇と同じように「まなかのお墓が欲しい」という考えが先に来てくれるようにしたいなと。
そのために、またお参りに行きたくなるような仕掛けを、建築家の方と相談をしてたくさん作っています。
自分のお墓なんだと思える個別性や、聖域性を感じるランドスケープを見て、そして説明を聞いていただくうちに、だんだんと惹かれてきたというお客様も少しずつ増えてきています。
確かにお墓を購入する時、アクセスの良さなどが優先されるというのは分かります。
このような取り組みが、結果的に貴社のお墓の購入やお客様の満足感に繋がっていくとお考えなんですね。
社長:そうですね、そもそもお墓というのはその人が眠りたい場所であるということが重要だと思っています。
「ここなら自分が眠るのに良さそうだな」「ここだったらお父さんやお母さんに眠ってもらいたいな」という感覚がお墓選びにおいては重要ですから、施設そのものにそう感じていただけるように作ることを大切にしています。
また、そのお墓がどういった意図で開発された商品なのかを、当社の社員がしっかりと説明をさせていただき、ご理解いただいたうえで購入していただくよう心がけています。
その結果、購入した後に何が起こるかというと、新しいコミュニティへと繋がっていくと考えているんです。